”IB(International Baccalaureate)”バカロレアに興味はありますか?ーその教育内容や資格とは

帰国後の学校選び

最近よく耳にするバカロレアという言葉。

IB認定校、バカロレアプログラムをカリキュラムに取り入れている、ということを

謳っている学校も増えてきています。

2012年にIB修了資格である”IBディプロマ資格”を取得できる学校の拡大・推進が閣議決定されたことは皆さんご存知ですか?

このことからもわかるように、IBプログラムの導入拡大を日本政府が後押しをしているのです。

大学入試に有利になるから、という話をなんとなく聞いたことがあるけれど・・・

一体何なのかわからない・・・

という方は多いと思います。

まずは具体的にバカロレアというのはどういうものなのかということを紐解いていきましょう。

と、その前に朗報!!

子供に受けさせたいとお考えの方はもちろんですがご自身のキャリアとしてIBの世界に踏み込みたいという方に朗報をお伝えしたいと思います!University of the PeopleでIBがコラボしたオンライン、必要経費以外はかからないという修士課程があります。https://saikou-kikoku.com/muryouonline-uopeople-ib/

ご興味のある方はぜひチェックしてみて下さい!

世界共通の成績証明書

IBとは

IB(International Baccalaureate=国際バカロレア)は、1968年にスイスのジュネーブで設立された非営利団体である国際バカロレア機構(International Baccalaureate Organization)が提供する教育プログラムのことです。

その成り立ち

第二次世界大戦後の欧州では、その反省平和主義型教育に移行しようという機運が高まっていました。国際バカロレア機構のあるジュネーブには多くの国際機関が集まり多国籍の子供たちが一緒に学校で学んでおり、様々な背景をもつ子供たちを評価するための基準が必要とされていました。

そこで生まれたのがIBです。

IBは「世界共通の大学入試資格」、そしてそれにつながる教育プログラムです。

IBの理念

多様な文化への理解と尊重の精神を通じて、より良くより平和な世界を築くことに貢献する探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的とする

IBの目指す学習者像

・Inquirers 探究する人

・Knowledgeable 知識のある人

・Thinkers 考える人

・Communicators コミュニケーションができる人

・Principled 信念のある人

・Openーminded 心を開く人

・Caring 思いやりのある人

・Risk-takers 挑戦する人

・Balanced バランスの取れた人

・Reflective 振り返りのできる人

参照元:文部科学省HP 国際バカロレアの理念http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/__icsFiles/afieldfile/2015/02/09/1353422_01.pdf

 

バカロレア認定校とは

 

IBOからカリキュラムの採用を認められた学校の事を指します。

2018年時点で世界140以上の国、地域で4846校で採用されており、日本ではインターナショナルスクールを含めて47校。

ただし、一条校では20校にとどまっています。

(一条校とは学校教育法第一条に規定されている国から認可を受けた学校の事、インターの多くは一条校ではありません。)

認定校は下記文科省HPでご確認ください。

http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/1356266.htm

なにをどのように学ぶのか

IBは日常生活の様々な事象にフォーカスし、そのルーツを探りだし、どのように変化してきたのか、何のためにあるのか、自分たちとどのように関わっているのか、などの視点から考えていきます。

そして、その事象に対する自分のアプローチは適切であったかを最後に検証します。

物事を本質的に多面的に深く探求する姿勢を養うことが目的です。

こちらはIBOのHPに記載されている”個人と社会”グループの実際の試験問題です。

参照:https://www.ibo.org/globalassets/programme-information/sample-exam-papers/itgs-specimen-papers-hl-sl-en.pdf

ベースとなる知識があるという前提でそれを踏まえた上で自分自身の意見を問われるという、非常に高度なものです。

同時に論理・文章構成能力も必要という、360度型の力が問われています。

ディプロマ取得までの道のり

統一試験受験までには年齢に応じて3つのプログラムがあります。

国際的な大学入学資格「IBプログラム」を取得するためには下記表3番目のDiproma Programの終わりに試験を受ける必要があります。

 

PYP(Primary Years Program)

3歳から12歳

使用言語:不問

目標:精神と体の発達を重視

「私たちは何者か」「どんな時代・場所に生きているか」「自己の表現」「社会構造」「世界の仕組み」「地球の共有」

内容:言語・社会科学・数学・芸術・科学・体育・個人教育を通じ、疑念・知識・技術・態度・行動を学ぶ

MYP(Midle Years Programme)

11歳から16歳

使用言語:不問

目標:今までの学習と社会とのつながりを学ぶ

内容:学習の姿勢・共同体と奉仕・創造性・多様な環境、健康・社会教育、の五つを取り入れつつ母語・外国語・人文・科学・芸術・体育・技術を学ぶ。最終学年には個人プロジェクトに取り組む

DP(Diproma Program)

16歳から19歳

使用言語:英語、仏語、スペイン語

目標:ディプロマの取得

内容:①母語 ②第二言語(外国語) ③個人と社会 ④実験科学 ⑤数学とコンピューター科学 ⑥芸術または選択科目

①から⑥の各グループの中にさらにいくつか科目があり、各グループから1科目ずつ取得します。

更に下記3項目が必須です。

・課題論文ー自ら課題を立て答えを生み出すDPの集大成

・Theory of Knowledgeー論理的思考、クリティカルシンキングや知の本質を身に着ける学際科目

・Creative Action-ボランティア活動 

 

従来の試験形態とは全く違うため、おそらく親世代にとっては想像しにくいと思います。こちらの資料に全体像から詳細までが書かれており、正しくIBを捉えるのに非常に有効です。興味のある方はぜひ目を通してみてください。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/09/06/1325261_2.pdf

日本のIB入試実施大学

日本の大学が入試にIB制度を導入することは下記の2点から非常に大きいと考えます。

・海外から優秀な学生を呼び込むチャンスが増える

・海外の大学に目を向ける日本の学生にも国内の大学に興味を持ってもらう

今後導入大学は更に増えていくでしょう。

文科省HPに一覧がございます。ご参照ください。

http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/1308005.htm

海外大学(英語圏)におけるDPの取扱い

海外の大学では、DPは広く大学入学資格として認知されています。

・DPスコアを元に合否決定

・奨学金の審査

・大学初年度での単位の読替え

などが受けられます。

アメリカではDPのみで入学できる大学は殆どありません。共通試験であるSATの成績が求められます。しかし、DPスコアが合否判断に加味されます。そして、DP取得者の方が合格率の高い傾向にあります。

一方、イギリス、オーストラリア、ヨーロッパ各国では原則どの大学でもDPを入学資格として認めています。また、イギリス、オーストラリアなどの国々では中央教育機関がDPを含む、各資格のスコア換算法を作成していたり、大学ごとに出願に必要なスコアの目安も提供しています。

<イギリスの大学>

・University of Oxford 38~40

・University of Cambridge 40~42

・Imperial College London 39~41

・University College London 34~

・King’s College London 36~38

さすが、イギリスの代表的な大学だけあり軒並み高いスコアが求められています。

 

ちなみに、都立国際高校の国際バカロレアコース第一期生のDP資格取得状況について発表されていました。

取得率 平均スコア 最高スコア
国際高校IBコース 89.5% 31.0 40
世界平均 69.8% 28.6 (満点:45)

都立国際高校についてはまた詳しく記事にしたいと考えています。

第一期生でこの数字は非常に高いと筆者は感じました。

特に取得率が非常に高いですね。

厳しい現実があるということも忘れてはならない

IB認定校に行ってDPプログラムを履修し無事ディプロマを取得すれば素晴らしい道が拓けている、と思ってしまいそうですが、一方でバカロレアに手を出す前によくよく考えておかなければならないこともあります。

・勉強が非常に大変

従来の勉強、受験勉強よりも多くの時間をDP取得の学習に割くことになるでしょう。なぜならベースとなる知識を得たうえでそれを自分なりに表現する方法まで考えていかなければならないのですから。そして、求められるベースとなる知識のレベルは非常に高い。それは先に例として挙げた加藤学園の試験課題を見て頂ければわかると思います。

おまけに日本語DPの対象科目以外は英語、仏語、スペイン語で実施されます。高度な内容の学習を母国語ではない言語で行い、かつ思考を深めていくことは非常に難しくストレスに感じる生徒もいるでしょう。

・費用が高額

公立校もIB認定校を増やしていこうとしていますが、現状では殆どが私立かインターです。

インターは概ね200万円以上、私立は100万円弱から200万円弱といったところです。PYP,MYPは含めずDPだけでも3年間毎年この金額を支払い、課外活動も多くあるため他にも更にお金が必要となります。この先に大学進学にかかる費用までのことを考えると気軽には手を出せないですね。

まずは本人の意志・将来の展望、経済状況をよくよく考えてみましょう。

DP取得を目指すとなったら本人も親も相当の覚悟が必要です。

ディプロマを取得した著名人

ここまで読んで、ディプロマを取得する道のりの険しさが少しお分かり頂けたと思います。

この記事の終わりにバカロレアDPを取得した著名人をご紹介したいと思います。

 

・星出 明彦氏 宇宙飛行士 https://ja.wikipedia.org/wiki/星出彰彦

 

・Julie Payette カナダ総督元宇宙飛行士 https://en.wikipedia.org/wiki/Julie_Payette

 

・Justin Trudeau カナダ首相 https://en.wikipedia.org/wiki/Justin_Trudeau

 

・Lupita Nyong’o 女優 https://en.wikipedia.org/wiki/Lupita_Nyong%27o

 

様々な分野で活躍する魅力的な人物が多くいます。

もちろんIBのおかげという訳ではありません!

しかし世界を多面的にとらえ、本質を深く探求し、他者への敬意を忘れず、平和な世界を築くことに貢献する、そんなバカロレアの精神とここに挙げた方々の人物像は重なります。

教育というのはもはや大学入試突破をゴールとするものではなくなりました。

自分らしく幸せな人生を送るため、自分の能力を他者と協調しながら最大限に活かすための手段をもつ事こそが必要な事なのではないかと感じています。そしてその手段をプログラムを通して身に着けられるという点がバカロレアの素晴らしいところなのではないかと思います。

帰国生は言葉の面でのアドバンテージだけではなく、外の世界である意味自分自身が異質な存在という立場からの物の見方や他者への敬意、自己表現という部分でバカロレアで育てようとしている人物像と重なるものがあるように思います。

帰国後のお子様の進学先を考える際に、IB認定校も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

 

筆者の私見

日本のIB教育の導入は高等学校でのDP(ディプロマプログラム)の導入から入っています。

IBプログラムは”全人教育”を目的としています。ディプロマの取得のためではなく自分の知りたいこと、やりたいことをとことん探究し続ける姿勢とそこに辿り着くための確かな知識に裏打ちされた問題解決力を養う事にあると思います。この姿勢は小さな時から”様々な事に疑問を持つ”という習慣をつけることが必要なのではないかと思います。言われたことを正確にきちんとやるという事を重視する教育を受けていた子が高校で急に自分で多角的な視点でこの概念について自分の考えを述べよ、と言われても難しいものがあるのではないでしょうか。義務教育でのIBプログラム導入のハードルが高いことは理解できますが、PYPから導入することによりIB本来の意義ある学びができるのではないかと思います。すぐにできる取り組みとして、授業で学ぶことについて学ぶ目的とその手段を子供たちに考えてみてもらうなど、”形式主義的な授業”を少し変えるだけでも大きな違いがあると思います。

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