帰国子女の英語保持ー期待しすぎないこと?

教育関連一般

バイリンガルに育てたい

(この記事では第二言語=英語という前提で書かれています)

親のバイリンガルへの憧れ

旅行や勉強、仕事などで海外と触れる経験のあった方、駐在に出た方はもっと英語ができたらどんなに良いだろう、と思われたことが一度はあるのではないでしょうか。

 

 

 

同じ駐在で来ていても自身が帰国子女だったママは駐在に来た直後から自分で色々手続きをしたり学校関係のこともすいすいやって、外国人とすぐにお友達になり流暢に話している姿を見ると余計に羨ましく感じてしまうものです。

だからこそまさに”帰国子女”であるわが子にネイティブのようにかっこよく英語を話せるようになってほしい!と思うのも自然な事と思います。

”現地校に通い始めた時には教室で一言も話さずに日々を過ごしていた我が子が、段々お友達と遊べるようになってきた!するとめきめき英語が上達して学校でも活発になってきたようだ。発音もすごく綺麗ですごい!”

というような具合に日に日に英語が上達してくる子供を見て誇らしく、また頼もしくなることでしょう。このままいってくれればバイリンガルになって将来国内外で活躍できるかもしれない!と夢が広がります。

なんちゃって帰国子女

そして本人が大変な思いをして得たこの語学力。

帰国後、何としても維持したい!と思いますよね。

逆に忘れるがままにしておくと、将来子供から

”なんで英語を忘れないように勉強させてくれなかったの⁉”

”なんで何もしてくれなかったの⁉”

などと恨みつらみを言われるかもしれません。

実際帰国子女だけれど英語ができないと、”自分は英語ができないからなんちゃって帰国子女だ”というように感じ帰国子女であることを隠したり肩身の狭い思いをすることもあるようです。

言語習得について正しい知識を持とう

”日本に帰った瞬間から英語の忘却は始まるって聞くし、早く英語力保持の環境を整えなくては!”

と焦る方もいらっしゃると思います。

と、その前に言語習得の仕組みやその年齢との関係などについて一度よく考えてみませんか?

何故なら言葉の習得というのは年齢と密接に関係しており、ただやみくもに語学保持のために色々やってみても効果が得られません。また日常生活における必要性が無い、日本のお友達と遊んだり勉強がある中でプラスアルファである外国語をやらせることは負担感につながり英語はイヤ!と思うようになると後々良い影響は残りません。

それぞれの子供に適した時期に適したやり方で保持・向上を図ることがとても重要です。

英語の習得は思っている以上に時間がかかる

まず知っておかなくてはならないのは英語の習得は思っている以上に時間がかかるということです。

母語に加えて外国語に堪能になるためには幼稚園から初めて約5000時間必要だといわれています。

日本語と英語に共通点が殆どないこと、文化的背景も全然違うこと、母語の習熟度、から考えると子供が英語を使いこなすというのはとても難しいことだということが想像できると思います。

英語の文法はドイツ語と似ていますし、その語彙は75%がフランス語・ラテン語から来ています。日本語を母語とする我々にとっては単語一つ一つからやっていかなくてはなりません。

英語はできて当たり前、という風潮がありますが日本人にとってはとても難しいのです。

子供の英語習得のプロセス

 

必要な表現を鷲掴みで覚えていく

現地校でやっていくために、子供は生活に必要なものから覚えていきます。

周りが話していることを見て真似して実際に使ってみて自分の物にしていきます。

小さい子だと先生がよく言うような言葉”Be quiet” や子供同士において必須の”mine!”などでしょうか。

そうして覚えていったものを今度は組み合わせてみて、そして必要な文章を自分で組み立てる能力がついていきます。

ただ、文法には誤りがあったりまだまだ正しい英語ではないという状態です。

話せるようになってきた正しい英語が話せる

ということです。

会話ができるようになる目安と個人差

子供が一応会話ができるようになるには約2年かかると言われています。

が、それには個人差があり約2年から5年ぐらいのひらきがある、と言う学者もいます。

そしてその差を生み出すのが性格(外交的か内向的か)と英語との接触量と言われています。

ここで気を付けたいのが

”うちの子他の子供に比べて英語の上達が遅いんじゃないか”

”何か問題でもあるのだろうか”

と思ってしまい、その気持ちがそれとなく子供に伝わってしまうことです。

これには

子供はすぐに新しい環境にもなじむし、英語もすぐにできるようになる!

という根拠のない思い込みが根底にあります。

繰り返しますが、これは子供個人の性格や環境に寄るところが大きくそれによって大きな差が出てきます。このステレオタイプの思い込みはすぐに忘れましょう。

会話力と読解力

年齢の低いうちから外国生活に入った方が英語が習得できると思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、そうではないのです。

英語習得には”読む、書く、話す、聞く”の4つの能力が必要と言われています。

中でも読解力はその後の英語の保持に大きな影響を及ぼします。

小学校2・3年生と小学校5・6年生の英語の習熟状況を比較してみると発音以外の部分は5・6年生の方が滞在年数に対して習熟度が高いという結果がでたそうです。

これには読解力が大きく関係しています。

読解というのは母語で行う場合においても非常に大きなハードルです。

文を読んで理解するというのは認知力と分析力が必要になります。

当然ながら低年齢の子供ほどハードルが高くなります。一方日本語ですでに読める子供は英語の読解力の発達も速いのです。

海外生活に入った年齢と英語読解力偏差値を3歳~12歳まで、4つのグループに分けて比較した調査によると

最も伸び率が良いー7歳から9歳の間に海外に出た子供

最も伸びが緩やかだったー3歳から6歳の間に海外に出た子供

という結果がでました。

9歳まで英語環境にいると日本に帰っても英語を忘れない、と一般的に言われているのはこの読解力が大きく関係している考えられます。

環境による差

全日制の日本人学校に通っているのか現地校に通っているのか

日本人のお友達とばかり遊んでいるか現地のお友達ともよく遊んでいるか

社交的な性格か内向的な性格か

滞在時の年齢と滞在年数

など、これらによって英語の接触量が全然違い、英語の習熟度も大きく変わってきます。

現地校に通う子供は英語との接触量がとても多く必要性も高いので上達もそのぶん速いと言えます。

そして忘れてはならないのは、子供の英語は学校生活から学ぶものが殆どということです。ですので、学校とは異なる場面においての英語はそこまで期待できません。

自分の子供の語学力

実際どれぐらいなのか

いわゆる帰国子女の語学力ってどの程度なのでしょうか?

これは本当に千差万別です。

先にも述べたように言語の習得は年齢と環境と密接な関係があります。

何歳から何年間滞在していたのか。滞在中はどのような環境で過ごしていたのか。

日本で育った親にとっては子供の英語力が果たしてどれぐらいなのか

中々正確には把握できないと思います。

過大評価しない

英語で会話ができる≠正しい英語が身についている

ということは先に述べたとおりです。

子供は学校生活を通して英語を学んできています。

内容には偏りがありますし、年齢の限界もあります。

言葉というのは実体験を通して習熟していきます。ですから、幼少期に数年間海外に住んでいた、というだけでバイリンガルになれる、というのは大きな勘違いです。そして、友達同士や学校生活において英語を使いこなしているからといって”バイリンガルになった!”と思うのも危険です。

英語習得のゴール

 

 

皆さんの思う”英語ができる”、”バイリンガルである”というのはどういう状態なのでしょうか?

そもそも基準はなんでしょう?

IELTSやTOEFL、英検などのスコア、学校の成績、受験で求められる英語力。様々あります。でも、英語の語彙が少なくても発音が奇麗でなくても文法が間違っていてもすぐに場に溶け込んで楽しめる人もいます。読み書きは問題がなくても会話ができない人もいます。

恐らくこの記事をご覧になっている方の多くは

”将来どこに行っても自分の能力を発揮できる人になってほしい”

”語学で引け目負い目を感じることなく自分を表現しコミュニケーションをとれるようになってほしい”

そう思っているのではないでしょうか。

そうであれば帰国時の英語力を過大評価し、英語を忘れてい行くことに過度に神経質になることは得策ではありません。

コミュニケーションの場では経験・教養こそが物を言います。

様々なバックグラウンドを持つ人達と話したり一緒に何かをしたことがある。そういう経験があるか無いか。そういうことに慣れているか。

自分自身をよく理解し、自分を言葉で表現できるか。相手の話を聞く姿勢があるか。

それは発音でも流暢さでも語学力でもありません。

”保持”ではなく”学び続ける”

 

”保持”という言葉の持つイメージでつい現状のものを維持すると思いがちです。

英語を忘れていくのを阻止する、という目的ではなく長い時間をかけて英語を含め様々な事を学び続け、経験教養を積み、自分自身や広い世界について理解を深めていくという姿勢こそが重要であると思います。

経験こそ宝

英語を忘れていく我が子を見てもあまり落胆する必要はありません。

先に述べた通り語学力よりも経験こそが宝だからです。

見知らぬ土地でゼロからスタートして学校や地域で自分の居場所を見つけて生活をしてきた。

肌で世界の広さや多様性を知っている。

そのことこそが海外に住んだことがある本当の価値です。

英語だけにとらわれず、子供の頑張りを認めて褒めて、色々な可能性を更に伸ばしていってあげましょう!

 

この記事は英語の習得・学習についての導入編として書きました。

今後英語の習得や学習についてはシリーズ化して書いていきます!

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