帰国後の学校選びをするにあたり
”私立か公立か”という選択肢で悩んでいる方はそれなりにいらっしゃるのではないかと思います。
ご承知の通り小学校受験というのは子供の学力・能力だけで決まるものではありません。
家庭環境・教育方針・親子関係、全てが合否判断に繋がります。
であるが故に家族一丸となって取り組まなければならない非常に厳しい道のりです。
また、受験対策にかかる幼児教室・体操教室などの費用から面接のための洋服一式、晴れて合格した後の学費や寄付金・・・。
莫大なお金がかかります。それも六年間、途中で国立・公立に進学しなければ大学卒業まで、兄弟姉妹がいるご家庭は子供の人数だけぼんぼん出ていきます。入学後も恐らく習い事や塾に通うことになるでしょう。
・・・という諸事情はさておき。
帰国子女という特性、公立小学校の現状、中学受験競争の熾烈さなどもあり、私立小学校に通わせたいな・・・と漠然とでも考えるご家庭も多いのではないかと思います。
かくいう筆者もそのうちの一人なのです。自身が転勤族で公立育ちだったため私立小学校に通うという事がどういうことなのかいまいちピンとこないというのが実際のところです。
経済的な部分はとりあえず置いておいて(-_-;)海外駐在の家庭が私立小学校受験を選択する際に考えておかなければならないことについて見てみたいと思います。
小学校受験するのは特別な家庭だけ?
私立・国立小学校に通う子供
<東京都> 小学生約2.9万人のうち約4.8%
<神奈川県> 小学生約1.2万人のうち約2.5%
引用:学校基本調査 文部科学省2017年度
という数字があります。東京では受験して小学校に進学する子面が20人中1人と比較的多く、少子化の一途を辿るこのご時世に小学校受験者数はこの数年横ばいで推移しています。理由としては
・地元の公立小学校の評判が良くない
・2020年の大学入試改革
・熾烈な中学校受験の回避
・充実した教育環境
というのが理由としては多くを占めているようです。公立を回避したい、中学校受験を考えていた家庭が小学校受験にシフトするなど、一昔前に比べ小学校受験は特別な家庭がするものではなく一般の家庭にもそのすそ野が広がっています。
”小学校受験”というと未だにどことなく特別な響きがありますが、決してそんなことは無いのです。帰国後は当然近所の公立、と思っている方ももし状況が許すのであれば私立も視野に入れて考えてみても良いのではないかと思います。
海外駐在という事情
小学校入学後にまた海外赴任になったらどうするか
これはとても重要な事ではありますが、同時に決めておくことが非常に難しい問題であると思います。
それは・・・
”駐在先の国・地域によって帯同するかしないか変わってくるから!!”
治安・教育・医療に心配がないような場所に駐在が決まったら行きたい!となるのではないでしょうか。
一方で政情・治安・教育・医療に不安がある場合は帯同するのに躊躇すると思います。家族皆が苦労してお金をかけて入学した私立小学校に通っているとなればなおの事そうだと思います。
帯同するか、日本に残るか・・・
行く先も時期も何もわからない状態で答えはでませんが、もしこうなったら、というベースで良いのでご夫婦・ご家族で小学校受験をするかしないかを決める前にしっかり考えておかなければならないことだと思います。
休学・復学制度があるか
上記の小学校在学中に再び海外駐在になった場合、その学校に休学・復学が認められているかということが大きなポイントとなりますので、しっかり調べておかなくてはなりません。
ですが、残念ながらこの情報はHPやパンフレットに載っているものではありません。
個別に学校と相談してどのような取扱いになるのか決定されるようです。
学校にとっても各家庭様々な事情があるので画一的な対応が難しいのでしょう。
最近は国内外の転勤に対しての扱いが以前よりも寛容になってきていると聞きます。
もし特定の気になる学校があるようでしたら直接学校に問い合わせてみる、もしくは幼児教室では様々な情報を持っていますのでそちらに相談されるのも一つの方法かと思います。
公立小学校と私立小学校の違い
ここをしっかり認識しておくことは大切です!
それぞれ良い部分とそうでない部分があります。以下、筆者が感じる公立と私立の違いを挙げてみたいと思います。
それをメリットと取るかデメリットと取るかは各自違ってくると思いますのでそれをご自身はどう感じるのか考えてみて頂ければと思います。
【公立小学校】
・家から歩いて通えるので震災の時に安心
・ご近所にお友達ができる
・費用が安い
・先生は公務員、任期がくれば異動
・国や自治体の監督下にあり学習指導要領に厳格に従わねばならず制限が多い
・学校間の格差がなく均一で均質な教育が施される一方で柔軟性に欠ける
・能力のある子供を伸ばすよりも底辺にあわせる傾向がある
・子供は様々で、保護者も色々なタイプがいる
・中学校受験をする子供が多いと6年生の3学期には出席人数が2,3人などという場合もある
・帰国子女積極受け入れ校もあるが数は非常に限られている
・帰国子女という特性への理解・対応がない場合が多い
【私立小学校】
・通学に公共交通機関を使う必要がある場合が多い
・費用が高額
・設備が整っている
・各学校ごとに教育理念があり、それに基づいた教育を行う
・教師の異動が殆どないので長期的なビジョンをもって教育が行われる
・学友同士の結びつきが強く一生の友となる場合も多い
・子供は受験を突破しているので生活態度などが既に身についている
・学校独自の授業を設けているところも多い
例)「裁縫」「演劇」「舞踊」「宗教」「情報」「知能訓練」
他にも語学系ー英語にとどまらずフラン語などもあり
・中高、中高大の一貫校もあるが、中には私立でも中学受験をする子が多い学校もある
・帰国子女積極受け入れ校が多くなってきている
家庭の教育方針と学校の教育理念
上記の公立と私立の違い、皆さんはどう感じられましたか?
皆さんは大切な我が子にどう育っていってほしいか、どういう人間になってほしいかじっくり考えてみたことがありますか?
ご家庭の譲れない、大切にしていることは何か。
まずはここを明確にしておく必要があります。
駐在員家庭が私立にするか公立にするかを決める時のポイントを考えてみました。
・子供の性格、子供自身の考えをしっかり聞く
ある知人は子供と一緒に学区域の公立小学校を見学に行ったところここは嫌、と言い出し見学に行った私立小学校への進学を希望したそう。受験があること、そのための準備が必要な事を説明しても本人の意志が変わらなかったため私立受験を決めたそうです。
・将来の転居を伴う転勤の有無
これは”わからない”という方も多いと思います。我が家も現時点で将来的にまた転勤・海外駐在があるかはわかりませんが、もしあった場合には基本的には帯同するとい方針夫婦間で一致しています。
・帰国子女という特性を伸ばしたいのか
公立にも帰国生受入れモデル校があります。とはいっても私立の方が帰国生にとっての環境が整っているといえるでしょう。小学校から英語で授業が行われるコースのある学校もあります。可能であればお子さんと学校見学に行き、両方を比べてどちらに行きたいか子どもと一緒に考えるのがベストであると思います。
・経済的に私学に通い続けることが可能か
受験準備、入学金、学費、寄付、交通費、イベント毎の出費、その他習い事や塾。私立は本当にお金がかかります。これはよくよく考えておかねばならないことですね。
・大学までの進学プランをどう考えるか
教育を取り巻く環境の変化はテクノロジーの進化と共に激変しています。今の教育の形態も数年後どのようになっているのか・・・。教育へのアクセスがより多様化する中で初等教育よりもさらに選択の幅の広い高等教育をどのように受けるのか。例えば、こちらの記事でも紹介しているUniversity of the People(アメリカの認可大学)はアドミッションフィーなどの諸経費のみで学位を取得することができます。教育界を取り巻く動向も情報収集し考えていかなければなりません。
・公立の学校では家庭の教育方針を叶えることは難しいのか
駐在先で知り合った方で何人か心に残る素敵な方に出会いました。それぞれ華やかなキャリアをお持ちでしたが、大学までずっと公立であったり高校まで公立、という方が意外に多いのです。皆さん帰国子女ではありませんが英語も堪能です。ですから、私学に通ったから多くの親が思い描くような”グローバルに活躍できる人材”になる、という訳ではないのです。私学を目指すのは必要となる準備、費用を考えてもなかなか覚悟のいる決断です。勿論それだけの価値はあるのでしょう。けれど、本当にご自身のお子さんや家庭にとって私学というのがベストな選択なのか、冷静に考える必要があります。
学校選びの重要性
時代は確実に変わっています
帰国後の学校を選ぶときに、自分が子供の頃はこうだったな、と自分の子供時代を基準に考える方は多いと思います。けれど、これはもはや当てになりません。
親も子も学校も先生も全てを取り巻く環境が時代と共に変わりました。
学習環境も公立であってもITの普及などにより様変わりしています。公立間の設備の差もあります。
帰国時に家選びをする際にはぜひ学区の学校の評判を不動産屋さんに聞いてみたり、余裕があれば足を運ぶ、電話で問い合わせをしてみるなどして感触を見てみると良いと思います。
公立でも私立でも、納得感をもって学校に通わせられたらと感じます。
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