駐在先から日本にもどり学校生活を始める我が子。
一番の心配事はなんですか?
途中で入ってきてクラスに馴染めるか
授業についていけるか
感覚のずれを本人と周りがどれだけ感じるのか
先生やクラスメイトとうまくやっていけるか、浮かないか
担任の先生は帰国子女に対する扱いに慣れているか
知らないことやできないことをサポートしてもらえるか
など、不安は尽きないと思います。
私立においては帰国子女を積極的に受け入れていたり帰国子女に人気の学校などがありますが、公立に関しては目黒区の東山小学校は有名ですが、他はあまり情報がありません。
しかしながら、帰国子女は”未来のグローバル人材”として産学官から注目を浴びている存在です。実は文科省は15年以上前から帰国子女に対する受け入れについて各都道府県に対し通知を行ったり様々な施策を打ち出しているのです。
海外子女に対する文科省の取組を知っていますか?
実は様々な施策に登場する”帰国子女”
文科省は「帰国子女教育の充実方策について」という各都道府県の教育委員会向けの通知の中に、帰国子女教育に関して”生活適応指導””日本語指導””学習適応指導””特性の伸長及び活用に関する指導”という4本柱を定め、現場での帰国子女に対する望ましい対応について記載しています。
更に学習指導要領の”教育課程実施上の配慮事項”にも帰国子女と外国人生徒に対する望ましい教育の在り方が書かれています
詳細に望ましい対応が記載されているのですが、一言にまとめると
”児童一人一人の実態をよく把握し一人一人にあわせた配慮をすること”
ということが書かれています。
具体的には
・学校生活をサポートしてくれる児童を設定する
・お互いの違いを認め合えるような学級づくり
・必要に応じ日本語や学習の指導を行う
・帰国子女の特性を伸ばし、他の生徒への国際理解を深めるような教育を推進
など。
画一的なイメージのある日本の学校。
筆者は学習指導要領や他の施策の文書の中に何度も”一人一人に配慮”という文言が出てきたことが意外に感じました。
学校現場の実態は・・・・
筆者が駐在から日本に帰国した時の話です。
初めて学校に行きクラスでみんなに紹介されました。
その時に先生から
「英語で何か言ってみて」
・・・・と言われたことを未だに覚えています。
それが嫌だったとか傷ついた、とかではなく
ひたすら”戸惑った”。この言葉に尽きます。
こういったエピソードは今でもあるのでしょうか?
帰国生徒に対する教育の指針は様々定められていますが、外国人生徒とひとまとめにして考えられ帰国生徒のみを対象とした対応は殆ど為されていません。
実際は外国人生徒への日本語指導が主たる取り組みとなっています。
それは恐らく日本語能力の問題で授業を理解できない生徒がいると全体の学習に支障をきたすため早急に解消しなければならないからだと思います。
また、”帰国子女に配慮した”、”帰国子女の国際感覚を他の生徒と共有” ということを積極的に取り組むには現場においての必要性が低いのではないかと思います。
教員の業務過多という面も大いにあるでしょう。
また、教員にとっても帰国子女というのは理解しがたいものがあるのではないでしょうか?帰国子女が持っている国際感覚、と言われてもそれがどういうものか具体的にイメージし、それをどう授業に活かすのか。これは非常に困難なものがあると思います。帰国子女である生徒自身も海外経験を通して学んだことを言葉にして他の人に伝えるというのは非常に高度な事であり年齢を考えても難しいものがあると思います。
帰国子女の特性とは何なのか
ここまで文科省の施策を見てきて、”特性”という言葉が多用されていますが、では帰国子女である我が子の特性とは具体的にどういうものなのでしょうか?
海外駐在員家庭の子供
駐在員の任期は多くが3年から5年が一般的ではないかと思います。
駐在員はいつかは日本に帰るという事が決まっているため、日本語教育もしっかりやっていると思います。もちろん日本語が多少おかしいなどの問題はあるにせよ、まったく理解できない、読み書きできない、日本語でコミュニケーションをとる事が難しい、といった事はまずないと思います。
また、勉強面でも全日制の日本人学校に通う子は全く問題ないでしょうしそうでない子でも補習校に通ったり通信教育を受けたりして、なんらかの形で日本のカリキュラムを日本のやり方で学んでいます。多少の遅れや理解不十分のところがあってもそれは別に海外子女に限った事ではないでしょうから、これも大きなハードルになるとは思いません。
帰国子女の特性は日本語や学習の理解ではなく
考え方感じ方、言動の違い
であると筆者は考えます。
私たち親の願い
帰国子女である我が子の通う学校に私たち親が望むもの
それは
”違いを否定しないでほしい”
という事なのではないでしょうか?
特性=違い
日本でずっと生まれ育った子と一定期間を海外でで過ごした子に
感じ方考え方や言動に違いがあるのは当然です。
それはどっちが良い悪いではありません。
親である我々もそうではありませんか?
駐在に出る前と後では色々と物の考え方や感じ方が変わったと筆者自身感じています。
けれど”自分が滞在していた国ではこうでした。”という発言は日本ではあまり良い印象を持たれないことが多いと大人は知っているので控えると思います。
けれど子供はそんな反応があるとは想像もしていません。
クラス内でその違いを見せた時に、先生やクラスメイトに否定しないでほしい。
そう思うのです。
否定されてしまうと今まで本人が苦労して積み上げてきたものを自分で押し殺そうとして、自分で自分を否定するようになってしまうから。
日本で生まれ育った子も帰国子女も望むことは同じ
これを書いていて気づきました。
帰国子女であろうとなかろうと、特性は一人一人が持つもの。
帰国子女だから、ではなく、子供たち一人一人の特性に配慮と尊重が必要なのだろうと思います。
教育現場の実態を知らないからそんなことが言えるのだ、といったお叱りを受けそうですね。
特別な事をする必要はないのです。
他者を尊重し、認めて協同する。その気持ちを言葉に出して示す。
これだけで良いと思います。
例えば何か自分の意見を言ったときに
ーそういう考え方もあるんだね!意見を言ってくれてありがとう!
ーじゃあこれについてはどう思う?
そんな一言をかけるだけでその子の芽がぐんぐん伸びていくと思います。
そのほんの一言が子供の心の栄養になるのだと日々の生活の中で強く実感しています。
学校でだけではなく、親子間でもこうした声掛けを意識的にすることで、子供も他の子に対してこうした態度ができるようになるのだと思います。
自分たちの身の回りから始めていきましょう!
まずは我が子のそのままを認めて愛情を注ぐことから。
その輪が少しでもひろがっていきますように。
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