駐妻、海外駐在、帰国子女・・・・
これらの言葉、不思議なものでどことなく特権的な響きがあるように感じませんか?
特に”駐妻”という言葉。
夫の稼ぎで駐妻同士優雅にランチしてゴルフやテニス、お料理などの習い事に興じて暮らしている・・・そんなイメージがついてまわります。
世間一般のイメージと実際駐妻されている方の認識は一体一致しているのでしょうか?
筆者は実像とイメージは乖離していると感じます。この記事でも便宜上”駐妻”、と一括りにしていますがその実態は様々です。夫が妻の駐在に帯同してきていたり(駐夫⁈)帯同で来ていたけれど働きはじめたり。
多様化する駐在員の実態ですが、この記事ではいわゆる多くの人がイメージする”駐妻”について書いています。
駐在生活を楽しむ方もいれば一方で人間関係や夫婦関係で悩んだり環境に馴染めない方もいます。
もしかしたら”駐妻”という言葉の持つイメージに囚われて身構えているかもしれない。
と思い当たりました。
というのもネットを見るとセンセーショナルな出来事が沢山載っているから。
でも、本当に自分の身の回りもそうなのでしょうか?
リラックスして駐妻ライフをスタートし、過ごすためにイメージと実態を比較してみたいと思います。
”駐妻”のイメージ
この写真のような感じでしょうか(笑)⁉
Google検索で”駐妻”といれると
カースト
マウンティング
嫉妬
うざい
群れる
贅沢
いじめ
うつ
というネガティブワードが並びます。
こういう情報をこれから駐在される方が見ると恐ろしくなってしまいますよね。
でもこれ、赴任地、勤務先、本人の性格によって全く違ってきます。
独特の世界ーそれは助け合い、支えあいが必要だから
日本にいる時よりも人との距離感が近い
これはある意味本当であると思います。
しかし、決して悪い意味ではありません。
私たちは人と付き合うときにどれぐらいの距離感を保つのが適切かを非常に重視します。
相手にとって、自分にとってどのぐらいの距離感が心地よいのか、それは良いお付き合いを続けるためにとても大切なことです。
それが海外駐在になるとどうして距離感が近くなるのか。
自分の存在を多くの知らない人が知っていたり、家族構成や勤務先がどこか知っていたり、家の行き来が頻繁だったり・・・
日本にいれば隣近所の人と助け合いが必要な場面というのはそう多くはありません。
海外で暮らすということは日本の常識が通じない、日本では当たり前のようにできることができない、という事が度々起こります。
それは西欧諸国、先進国であってもです。
発展途上国であればなおのことです。
ですから情報交換したり助け合ったりすることが必要になるのです。
同じ日本人ですから必要な事、知りたいことは似通っていますよね。
ーおせっかい、干渉されているようで気分が悪い
ー有難い、心強い
このようにそれを良しとするかどうか。受け取り方は人によって違いますよね。
筆者が駐在した地域は非英語圏で気候が大変厳しいところでした。
食べ物も思うようなものは手に入りませんでした。
”あそこのマーケットでニラが売っていた!”といった情報に皆歓喜し買いに走るような場所でした。子供が風邪をひいているけど夫が出張中でいない、といった時には買い物を頼んだりしあっていました。ありがたかったです。
なぜ夫の勤務先を皆が知っているのか
マウンティングするためじゃありませんよ!!
海外駐在の多くは会社から派遣されてきています。帯同家族の安全は会社及び日本国の負うべきところです。
そして夫はその家族の代表であり、更にその所属先がどこかの把握が必要になります。
有事の際のスムーズな安全確認の為、ですね。とはいえ、自分の友人関係において夫の勤務先というのはあまり関係ありません。
駐妻同士で夫の勤務先、言い合いますか⁇
私の周りでは初対面の人に会社どこ?といきなり聞く人はいません。ですが、又聞きであの人はここの会社みたいよ、と言ったように耳に入ってくることはあります。けれど、自分からはあまり聞きませんし、私も聞かれることは殆どありません。
ただそういう話をすることが日本の時のようにタブーに近いものではないかな、という気はします。
それはなぜか。
夫経由で知り合いになったり、海外では家族単位でのお付き合いが多くなります。
○○会社の○○さん、といった紹介のされかたをすることが多く、枕詞のように勤務先名がついてきます。勤務先を聞くことで横のつながりができたりするので合理的なのかもしれません。
また、同じ会社であれば福利厚生の条件が年次で多少は変わってきますがほぼ同じです。
ですから家選び、学校選びする際に情報交換できるととても便利です。
あまり親しくない人が夫の勤務先を知っていたり、こういうもろもろのことに抵抗感を持つ気持ちもあるかもしれません。
筆者は一匹オオカミ気質な部分があり、最初の駐在の際は若かったこともあってこうした慣習に抵抗感がありました。
ただ、その慣習の良い面を実感するようになり勤務先を知っていることは上記の理由から合理性があると思うようになりました。
ですから、最初に抱いた抵抗感や嫌悪感は慣れや経験から融和していくものと思います。
駐妻同士のお付き合い
自分の時間は自分のもの
一緒に出掛けたりランチしたり。
そんな機会が多い方そうでもない方、そういうのが好きな方そうでない方、それは人それぞれです。
もし行きたくないのに誘われるまま参加していると
お金も時間も使ってしまって、残るのは疲労感だけ⁉、ということになってしまいます。
もしどっぷり駐妻のお付き合いの中に入っていて息苦しく感じるようになってきた方は勇気をもって少し距離を置いてみてはいかがでしょうか?
勇気を持って、と言っても周りに宣言する必要はありません!
例えば習い事を始めた、勉強を始めた、仕事を始めた、子供の学校でボランティアを始めた、現地のコミュニティの集まりに行くようになった・・・・
そういう理由ができたら少し距離を置くきっかけになります。
でも、ランチやお茶のお誘いを断るのにそんなに詳細な理由を述べる必要もない気がします。
その日はちょっと都合が悪いので・・・
と言って”なんでなんで??”と根掘り葉掘り聞いてくる人はちょっとずれています。
一人の自立した大人です。だから自分のために時間を使う!
はじめは勇気がいるかもしれませんが、あまり周囲にとらわれすぎず自分の心地よいやり方で周りとの良い関係を築いて下さい。
そして、自分が思っているよりも周りの人もさっぱりしたものかもしれませんしね。
会社の婦人会、ありますか?
そうはいってもたまにははずせない会というものがあります。
その会というのが会社がらみだったりするから気が重くなってしまうんですよね・・・。
一昔前は社長夫人を筆頭に夫の役職で席が決まっていたり名簿が作成されたりするような会社もありました。今はそういうのはやめようという風潮で、なるべくフラットになるよう配慮されるようになっているようですね。
そそうをしては夫の仕事にひびくのではないか・・・(それはさすがにないでしょう!)
となんだか必要以上に緊張してしまいませんか?
この婦人会ですが、そもそも何のためにあるのでしょうか?
それは帯同家族の安全安心を図るため、という建前です。婦人会のない会社も多いですよね!
婦人会はまさに”トップや上の方による”、これにつきるようです。
もし強烈な方に当たってしまった場合…
無難にやり過ごす、もしくはメンタルが相当強く夫の理解も得られれば婦人会を抜ける、という選択も有りかもしれませんね。
先輩駐妻の経験談はヒントがいっぱい
おばさんのお説教とバカにしてはいけません。
そこには経験に裏打ちされた創意工夫に富んだサバイバル術が詰まっています。
そして、海外での育児、日本で帰国子女の子供を育てる、これらの体験談は本当に貴重です。
そして多くの先輩駐妻は惜しみなくご自身の経験や知恵を語って下さいます。
仲良くなる友人は子供の年齢が近方が多くなると思いますが、子供の教育などについて知りたい場合には自分の子供よりも年上の子を持つ方に聞く事をオススメします。
海外での帰国後の受験対策や勉強法、帰国後の学校選びなど、先輩駐妻の話しはメチャクチャためになります!!
臆せず懐に飛び込んでみて下さい!
新たな視界が開けると思います。
パートナーと良い関係を築こう!
最後に頼りになるのは夫婦
信頼のおけるお友達が身近にいても言い難い悩みはあるものです。
そんな時に一番の味方になってくれる(はず)なのは夫です。
お互いに日々時間に追われて過ごしているとゆっくり話す時間もないですし、疲れているとつい相手の気になる部分が目に付いて非難してしまったりします。
お互いが感謝と労いの気持ちを持ち合いながら、そしてその気持ちを言葉にして相手に伝えながら良い関係を維持し、これからずっと続く夫婦生活の為にも基盤をしっかり作っておきたいものです。
”察してほしい”、”言わなくてもわかるでしょ”というのは夫婦どちらもがもつ甘えですが、言葉にするだけで気持ちがとても暖かくなります。
妻への労い
”海外駐在に連れてきてやってるんだから感謝しろ”
”主婦になれたんだから良かっただろう”
と思っている人がいるようです。
帯同してきている方にも日本で仕事・友人・生活がありました。
慣れない土地で生活を始めるための苦労、人間関係を一から作る苦労、育児の悩み、言葉の壁、挫折感、もろもろのビターな事が日々起こります。
それをもし大したことない、と思っているとしたら想像力の欠如です。
もしも”俺がやってやっている”という気持ちを捨てきれない方がいらしたら百歩譲って
”いつもありがとう”、という言葉だけは欠かさないようにしてくださいね!
なぜならそれだけで救われるのです。
私は仕事もしないで家事・育児だけで毎日が過ぎていく・・・私っているだけで赤字なんじゃないか・・・これからどうなるんだろう・・・私は価値のない人間なんじゃないか・・・
こうした漠然とした不安を抱えている人は思ている以上に多いものです。
夫の労いの言葉や優しい態度があればそうした不安は軽減され、毎日を楽しもうという前向きな気持ちを持とうという意欲に繋がります。
ぜひ、労いの気持ちをもって妻と接してください。
夫への労り
これは逆もしかりです。
筆者は外国で仕事をしたことがありませんので想像するしかありませんが、言葉や文化の違う中仕事をするというのは相当に骨の折れる事であろうと思います。
そして、家族が安全に健康に幸せに暮らせるよう生活を経済的にも物理的にも支え気を付けるということも多忙な中では大変な事です。
週末は出かけたり子供と遊んだり用事の送迎をしたりと自分の時間は中々持てません。
そんな夫に対して文句が多くなったり、ネガティブな発言ばかりしていると家での時間が苦痛になってしまいます。
ぜひ優しい態度で感謝の言葉を忘れないようにしてあげてください。
筆者の尊敬する友人の言葉で印象的であったのが
ー良い母親でいるというのも重要だけれど、私はまずは良い妻でいるということを心掛けている
夫婦関係は家庭の基盤だから。
だそうです。説得力があります。
互いが労わりあうことで家庭内に温かい愛情が通います。
子どももより安心して楽しく過ごせるように違いありません。
良い夫婦関係は今後数十年にわたり家族一人一人にとり大きな財産を残してくれます。
今日から感謝・愛情の気持ちをもってお互いを労わりあいましょう。
海外駐在は楽しんだモン勝ち!!
これは帰国して行った先輩駐妻が口を揃えて言う言葉です。
周りを気にしてばかりいたらもったいない!!
今ある生活を最大限に楽しまなくちゃ!!
帰国すると駐在期間がどれ程恵まれていたか、様々なチャンスがあったのかを実感するのでしょうね。
皆さんこう力強く語ります。本当に力強いです(笑)。
あなたは今の生活を楽しんでいますか?
“最高の帰国”をするために、”最高の駐在”にして下さい!
しなやかな心・少しの勇気・ある程度の割り切り・自分の責任で自分で判断する、です。
新しい駐妻像
本帰国を控えた方のためのサイトの主旨からはズレてしまいましたが、”駐妻”を面白おかしく書いたり、検索ワード上位の言葉を並べ世間一般のイメージに迎合するような話しばかりがまかり通っている現状を見て、そんな世界ばかりじゃないよという事をお伝えしたくてこの記事を書きました。
言葉の持つ力というのは恐ろしいものです。
“駐妻”という言葉がいつまでも一人歩きして実体とどんどん乖離してしまっています。
いっそ”駐妻”という言葉を捨てて、新しい造語を考えてみませんか?
最近流行りのグローバル人材ならぬグローバル妻、とか(長すぎですね(-_-;))。
何かよいニューワードがありましたらぜひご一報ください!
これから駐在を控えている方にももっと肩の力を抜いてもらうためにも”駐妻像”をupdateしていきましょう!
コメント