日本と海外の学校生活における違いは数え上げればきりが無いほど大きく違います。
例えば日本では子供だけで出歩いたりすることが一般的ですが海外では地域によっては法律で禁止されていたり安全面から必ず大人が付き添って出かけることが多いと思います。
そうした環境の違いから、日本の子供が普通にしていることを海外で育った子供はしたことがないというものが多々出てきます。
海外での生活に慣れてくると、逆に日本にいた時にどうしていたか、日本の学校の様子はどうなのか想像することが難しくなってきませんか?
今回は海外で幼児を育てている保護者を対象に
”日本の小学一年生ができそうなこと”(海外子女教育振興財団調べ2015年)
というテーマで行われたアンケート結果を見ながら、小学校一年生の時点での日本の子供と海外で育つ子供のできそうなことの違いについて、海外で育った子供と保護者が知っておいた方が良い事について考えてみたいと思います。
日本の小学校一年生ができそうだと思うもの
(海外で幼児を育てている保護者300人へのアンケートから)
(調査結果の中から学校生活に関係があるものを抜粋してあります。)
①朝一人で起きられる
②一人で着替えができる
③一人で登下校ができる
④ご挨拶がきちんとできる
⑤ひらがなカタカナの読み書きができる
⑥簡単な計算ができる
⑦和式トイレが使える
⑧電車やバスに一人で乗れる
⑨簡単なお買い物ができる
①~⑨についての検証
①~④までは日本・海外関係のない共通事項ですね。
②の着替えに関しては日本の学校は体育、プール、など着替えをする機会が多くあります。
素早く着替える練習はもしかしたら少し必要かもしれません。もしも不安があるようであれば、着替えなければならない授業のある日にはボタンの少ない洋服を選ぶ、などの工夫をするのも良いかもしれません。
⑤に関してはひらがなは一年生で習うものですが、入学当初からかなりの子供ができているというのが実際のところのようです。できなくても問題はないといわれています。というのは読める子供が大半であっても授業では必ず丁寧にひらがなを教えるからです。ただ、自分の名前ぐらいは入学までに読めるようにしておいた方が良いでしょう。
しかしながらいつかは帰国するという事がわかっている海外駐在員家庭はそれを見越して日本語の勉強もしっかりされている場合が殆どで、小学校入学前のお子さんであっても日本の子供達同様ひらがなの読み書きは一年生になる段階でできている場合が多いと思います。
⑥の計算については海外の幼稚園やプリスクールなどで早くから数字や計算を習っている場合はむしろ授業が物足りなく感じるかもしれませんが、日本語だと数え方のバリエーションが多く、すこし混乱するかもしれません。ひとつふたつ、いっこにこ、いっぴきにひき、などなど。
家族間の会話で少し意識すれば自然と身についていると思いますのであまり心配はいらないでしょう。
⑦和式トイレに関しては今は首都圏都心部の学校ならほとんど洋式トイレの設備があるそうです。ただ、一部洋式一部和式といったようにまだ和式がある学校が殆どだと思いますので写真や絵などを見せて驚かないようにしてあげると良いと思います。一時帰国中にもし和式トイレに遭遇したら教えてあげても良いかもしれませんね。ちなみに我が子は和式トイレがかなり驚きだったようで妙によく覚えています(笑)。
⑧電車やバスに一人で乗れる、に関しては完全に日本と海外の環境の違いでしょう。
できるできないというよりはいつから一人で出歩かせるか、ということをまず考える必要がありますが、切符の買い方や改札の通り方など知っておいた方が安心でしょう。
⑨簡単な買い物ができるというのも⑧と同じ環境の違いによるものですね。
子供はお買い物もゲーム感覚で楽しんでやると思いますのできっとすぐにできるようになるでしょう。
こう見ていくと海外で育児をする親が想像する日本の小学校一年生と海外で育った子供とそう違わない部分が殆どだと思いませんか?
日本へいずれ帰国する駐在員のご家庭は帰国後を意識して日本語教育もしっかりされているので、できることできないことで見ると日本と海外の小学校一年生では大差はないように感じます。
一年生にとり学校でできなければ困るものは
実際に1年生の担任である現役の小学校教師の友人に
”一年生で出来ていた方が良いことって何!?”と尋ねてみたところ
・衣類の着替え
・トイレ
の二つ、と言っていました。
確かに勉強よりもこの二点の方が本人が自分でできないと本人も周りも大変でしょう。この2点であれば海外組もそこまで神経質にならずとも良さそうですね。
本当に重要なスキルとは!?
すべての基本は
”自分の意思を大人にきちんと伝えられるかどうか” です。
海外で育ってきた幼児は日本語と外国語が混ざっていたり、日本語よりも外国語のほうが得意、ということが多々起こります。
”うちの子は日本語が怪しいけれど大丈夫かしら”
と不安になると思います。
けれど実は小学校入学時の子供の語彙力はずっと日本語環境で育ってきていたとしても言い方が違うと理解できない、という程度でしかありません。
(例)
”席についてください”ー理解できない
”座ってください”ー理解できる
子供は今自分の置かれている環境の中で、そこで使われている言葉を吸収していきます。
日本語、外国語ということは関係ないのです。
日本語での基本的な日常会話ができていれば心配ありません。
小学校入学のタイミングで帰国される方ー気を付けてあげたいこと
①子供をしっかりと見て、根気よく待つこと
赤ちゃんの頃から外国で育ってきた子にとっては日本に帰ってきたというよりも、また違う国に来た、という状態です。
今までそうだったようにまたすぐに慣れるでしょう、と安心してしまわず子供の様子をよく見てあげてください。
②必要なことは臆せずに先生に伝えること
先生の指示に従わない子供がいたとします。
”反抗して指示に従わない”
”指示が理解できていない”
”指示が聞き取れていない”
理由によって必要となる対応が違ってきます。
誤解から先生と子供双方が困ることの無いよう子供について必要なことはしっかりと伝えることが大切です。先生の対応も理由を知っているのといないのとでは大きく違ってくるでしょう。
③ 主観を交えず事実を伝えること
例えば学校の細かいルール、廊下は走らない、下駄箱で靴を履き替える、列を乱さず歩く、など・・・
学校現場の海外と日本の違いに保護者も子供も戸惑うことも多いでしょう。
細かなルールはついめんどくさい、ばかばかしい、と思ってしまいがちです。
日本の社会システムを反映するように学校にも細かなルールがあり、無駄と思われるものもあるかもしれません。
けれど、もし親が「くだらない」「こんなの意味あるの?」、などと言っているのを聞いたら子供はどう思うでしょうか?
「パパ、ママがくだらない、無意味と言っていたから守らなくて良いんだ」
と思ってしまうかもしれません。
また、帰国子女を持つ親が気になるのが”いじめ”ではないでしょうか?
「学校で英語を話したらいじめられるからやめなさい」
「いじめられないように気をつけなさい」
などと子供にネガティブなイメージを植え付けてしまうと、相手のちょっとした言動が気になってしまったり、本人だけがいじめられていると思い込んでしまうということになってしまいます。
親が気を付けるべきことは
良い、悪いということではなく”事実”を伝える、ということであると思います。
新一年生は帰国生に限らず子供、保護者、先生みんなが初めてのことだらけという状態からスタートます。下駄箱で靴を履き替える、授業前の起立着席、教室の移動、など多くのルールを学んでいきます。
日本で育ってきた子供たちも戸惑いながら一生懸命慣れようとルールを少しずつ覚えていきます。
ここまでお読みいただきどのように感じられましたか?新一年生になるタイミングで帰国される方も沢山いらっしゃると思います。一年生になるというのはどの子供にとっても期待と不安でどきどきするものです。
あまり外国で育ってきたから大丈夫か、と気負わず小学校入学という子供の大きな一歩を祝福してあげてください!子供たち、それぞれみんな頑張っていてすごいなぁとつくづく思います。
【ご参考】先生が思う入学前にできていてほしいこと
「小学校教諭が思う入学前にできていてほしいこと」
・自分の名前の読み書きができる(ひらがな)
・自分と保護者の名前、住所、電話番号が言える
・着替え
・困ったことがあれば先生に相談できる
・基本的な背活習慣が身についている(手洗い、歯磨き、排便、着替えなど)
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